プロペシアの服用は「毎日1回1錠」が基本ですが、なぜ一日も欠かさずに飲み続けることが、これほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、AGA（男性型脱毛症）が進行する根本的なメカニズムと、プロペシアの作用機序に深く関わっています。AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なDHT（ジヒドロテストステロン）に変換されることで引き起こされます。このDHTが、毛根にある受容体と結合すると、髪の成長期を短縮させ、抜け毛を促進する脱毛シグナルが発信されてしまうのです。プロペシアの役割は、この5αリダクターゼの働きを阻害し、DHTの生成を抑制することにあります。つまり、プロペシアを服用している間は、薄毛の進行を促すDHTの量が、体内で常に低いレベルに抑えられている状態になるのです。しかし、もし薬の服用を一日でもやめてしまうと、どうなるでしょうか。体内の薬の成分濃度が低下し、抑制されていた5αリダクターゼが再び活性化し、DHTの生成が再開されてしまいます。たった一日の休みが、すぐに薄毛の進行に直結するわけではありませんが、飲み忘れが習慣化してしまうと、DHTが断続的に生成され、毛根を攻撃する機会を与えてしまうことになります。これは、火事を消すために水をかけ続けているのに、時々その手を止めてしまうようなものです。せっかく鎮火しかけていた炎が、再び燃え上がってしまうかもしれません。AGA治療は、DHTとの絶え間ない戦いです。毎日欠かさずプロペシアを服用することは、その戦いにおいて、防御の盾を一日も手放さないという、最も重要な戦略なのです。