「ストレスで髪が抜ける」という現象の背景には、「自律神経の乱れ」が深く関わっています。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、呼吸、体温、血圧、消化、ホルモン分泌など、生命維持に不可欠な機能を自動的にコントロールしている神経です。この自律神経のバランスがストレスによって崩れると、頭皮環境や髪の成長にも様々な悪影響が及ぶのです。自律神経には、体を活動モードにする「交感神経」と、リラックスモードにする「副交感神経」の二種類があり、これらが状況に応じてバランスを取りながら働いています。しかし、強いストレスや慢性的なストレスに晒されると、このバランスが崩れ、交感神経が過剰に優位な状態が続いてしまうことがあります。交感神経が優位になると、血管が収縮し、血圧が上昇します。これにより、前述したように「頭皮の血行不良」が引き起こされ、毛根への栄養供給が滞り、抜け毛や薄毛の原因となります。また、交感神経が優位な状態は、皮脂腺の活動を活発にすることもあります。皮脂の分泌が過剰になると、毛穴が詰まりやすくなり、頭皮の常在菌(マラセチア菌など)が繁殖しやすくなります。これが、かゆみやフケ、炎症(脂漏性皮膚炎など)を引き起こし、頭皮環境を悪化させ、抜け毛を助長する可能性があります。さらに、自律神経は「ホルモンバランス」とも密接に関わっています。自律神経の乱れは、女性ホルモンや男性ホルモンの分泌バランスにも影響を与え、ヘアサイクルを乱す一因となることが考えられます。加えて、睡眠の質も自律神経によってコントロールされています。ストレスによる自律神経の乱れは、不眠や浅い睡眠を引き起こしやすく、髪の成長に必要な成長ホルモンの分泌を妨げてしまう可能性もあります。このように、ストレスによる自律神経の乱れは、血行、皮脂分泌、ホルモンバランス、睡眠といった、髪の健康に関わる様々な要素に悪影響を及ぼし、結果として抜け毛や薄毛を引き起こす大きな要因となるのです。ストレスを完全に避けることは難しくても、自律神経のバランスを整えることを意識した生活(リラックスする時間を作る、規則正しい生活、深呼吸など)を送ることが、ストレス性の薄毛対策には重要となります。
5月17