「亜鉛は髪に良い」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際に、亜鉛は私たちの体にとって必須ミネラルの一つであり、健やかな髪の毛を維持するためにも非常に重要な役割を担っています。なぜ亜鉛が髪にとってそれほど大切なのか、その基本的な関係性について見ていきましょう。髪の毛の主成分は、「ケラチン」というタンパク質です。私たちは食事からタンパク質を摂取しますが、そのタンパク質を分解し、アミノ酸として吸収し、そして再び髪の毛のケラチンとして合成するプロセスが必要です。亜鉛は、この「ケラチンの合成」において、酵素の働きを助ける補因子として、不可欠な役割を果たしているのです。つまり、亜鉛が不足すると、いくらタンパク質を摂取しても、効率よく髪の毛を作り出すことができなくなってしまう可能性があるのです。また、亜鉛は「細胞分裂」を活発にする働きも持っています。髪の毛は、毛根にある毛母細胞が分裂を繰り返すことによって成長します。亜鉛が十分に存在することで、毛母細胞の分裂がスムーズに行われ、髪の正常な成長サイクル(ヘアサイクル)が維持されやすくなります。亜鉛不足は、この細胞分裂を滞らせ、髪の成長を妨げる一因となり得ます。さらに、亜鉛には「抗酸化作用」もあり、体内で発生する活性酸素から細胞を守る働きがあります。頭皮の細胞が活性酸素によってダメージを受けると、老化が促進され、健康な髪が育ちにくい環境になる可能性があります。亜鉛は、頭皮環境を健やかに保つ上でも役立つのです。加えて、一部の研究では、亜鉛が男性型脱毛症(AGA)の原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)を生成する酵素(5αリダクターゼ)の働きを抑制する可能性も示唆されていますが、これについてはまだ明確な結論は出ていません。このように、亜鉛は髪の毛の合成、成長、そして頭皮環境の維持といった様々な側面から、髪の健康に深く関わっている重要なミネラルなのです。
9月4