近年、再生医療や美容医療の分野で注目を集めている「エクソソーム」。この新しい技術が、AGA(男性型脱毛症)を含む薄毛治療の分野でも応用され始めています。まだ耳慣れない方も多いかもしれませんが、エクソソームとは一体どのようなもので、髪の毛に対してどのような働きが期待されているのでしょうか。その基本的な概念から見ていきましょう。エクソソームは、私たちの体の中にある様々な細胞から分泌される、非常に小さなカプセル状の物質(細胞外小胞の一種)です。その大きさはナノメートル単位(1ミリメートルの百万分の1)と極めて小さく、細胞と細胞の間を行き来して情報を伝達するメッセンジャーのような役割を担っていると考えられています。具体的には、エクソソームの内部には、メッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)といった遺伝情報に関わる分子や、タンパク質、脂質などが含まれています。分泌された細胞(送り手)の種類によって、エクソソームに含まれる「メッセージ」の内容は異なり、受け取った細胞(受け手)の働きや性質に様々な影響を与えることが分かってきました。この細胞間の情報伝達機能に着目し、特定の細胞(例えば、幹細胞など)から抽出したエクソソームを、損傷した組織の修復や、老化の抑制、あるいは病気の治療に応用しようというのが、エクソソームを用いた治療法の基本的な考え方です。薄毛治療においては、特に「幹細胞」由来のエクソソームが注目されています。幹細胞は、組織の修復や再生に関わる様々な成長因子やサイトカインなどを分泌しますが、その働きの一部はエクソソームを介して行われていると考えられています。
5月1