AGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、比較的安全性の高い薬とされていますが、医薬品である以上、副作用のリスクはゼロではありません。その副作用の一つとして、頻度は稀ながら「肝機能障害」が報告されています。治療を受けるにあたっては、このリスクについて知っておく必要があります。肝機能障害とは、何らかの原因で肝臓の細胞がダメージを受け、その働きが低下してしまう状態を指します。AGA治療薬が原因で肝機能障害が起こる正確なメカニズムは不明な点もありますが、薬の成分そのもの、あるいはその代謝物が肝臓に負担をかけたり、アレルギー反応のような形で肝細胞を傷つけたりする可能性が考えられます。肝機能障害の症状としては、初期には自覚症状がないことも多いですが、進行すると「倦怠感(体がだるい)」「食欲不振」「吐き気」「黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)」「尿の色が濃くなる」といった症状が現れることがあります。これらの症状に気づいた場合は、すぐに医師に相談することが重要です。AGA治療薬による肝機能障害の発生頻度は、臨床試験などでは非常に低いと報告されています。多くの方は、問題なく服用を継続できています。しかし、元々肝臓に病気(肝炎、肝硬変、脂肪肝など)を持っている方や、日常的にお酒を多く飲む習慣がある方、あるいは他の薬(特に肝臓で代謝される薬)を多数服用している方などは、肝臓への負担が大きくなりやすく、より注意が必要となります。そのため、AGA治療薬の服用を開始する前には、医師による問診や、必要に応じて血液検査による肝機能のチェックが行われることが一般的です。そして、治療中も、定期的に血液検査(AST、ALT、γ-GTPなどの数値を測定)を行い、肝機能に異常が出ていないかを確認することが推奨されます。もし検査で異常値が見つかった場合は、医師の判断により、薬の減量や休薬、あるいは治療の中止といった措置が取られます。肝機能障害のリスクは低いとはいえ、ゼロではありません。自分の健康状態を過信せず、医師の指示に従って定期的なチェックを受け、何か異変を感じたらすぐに相談するという姿勢が、安全なAGA治療のためには不可欠です。
7月23