AGA(男性型脱毛症)が進行すると、なぜ髪が薄く見えてしまうのでしょうか。その核心にあるのは、「ヘアサイクル(毛周期)」の乱れ、特に髪が成長する期間である「成長期」が異常に短縮されてしまうことです。正常なヘアサイクルと、AGAによってそれがどう変化するのかを知ることで、薄毛が進行するプロセスが理解できます。髪の毛一本一本には、成長して抜け落ちるまでの決まった寿命、つまりサイクルがあります。健康な髪の場合、このサイクルは大きく3つの段階で構成されています。①「成長期」:毛根の毛母細胞が活発に分裂し、髪が太く長く伸びていく期間。通常2年から6年ほど続きます。②「退行期」:毛母細胞の活動が停止し、髪の成長が止まる期間。約2~3週間です。③「休止期」:髪が抜け落ちる準備をする期間。毛根は活動を休み、毛穴の奥では次の新しい髪の準備が始まります。約3~4ヶ月続き、その後、古い髪は自然に抜け落ちます。このサイクルが正常に繰り返されることで、私たちの髪は一定の量を保っています。しかし、AGAを発症すると、男性ホルモン(DHT)が毛根に作用し、このヘアサイクル、特に最も重要な「成長期」を大幅に短縮させてしまいます。本来なら何年も続くはずの成長期が、わずか数ヶ月から1年程度で強制的に終了させられてしまうのです。その結果、髪の毛は十分に太く長く成長する時間を与えられません。細く、短く、色素も薄いような、いわゆる「軟毛」の状態で退行期・休止期へと移行し、通常よりも早く抜け落ちてしまいます。これがAGAで見られる「軟毛化」であり、抜け毛の中に細く短い毛が増える原因です。この「成長期の短縮」と「軟毛化」が繰り返されることで、徐々に毛根自体も小さく(ミニチュア化)なり、最終的には髪を生成する能力を失ってしまいます。生えている髪が細くなり、さらに本数も減っていくため、髪全体のボリュームが失われ、地肌が透けて見える「薄毛」の状態が進行していくのです。AGA治療は、この乱れたヘアサイクル、特に短縮された成長期を正常に戻すことを目指しています。
11月5