月別アーカイブ: 5月 2022

検査でわかるAGAリスク評価の中身

検査でわかるAGAリスク評価の中身

AGA遺伝子検査を受けると、具体的にどのような情報が分かり、それがどのようにAGAの発症リスク評価に繋がるのでしょうか。検査の中身について、もう少し詳しく見ていきましょう。現在行われているAGA遺伝子検査の多くが注目しているのは、「アンドロゲン受容体遺伝子」です。この遺伝子はX染色体上にあり、男性ホルモン(DHT)を受け取るアンドロゲン受容体の感受性の高さを決定します。この遺伝子の中には、「CAGリピート」や「GGCリピート」と呼ばれる、特定の塩基配列が繰り返して現れる部分があります。研究によって、このリピート配列の「繰り返し回数」が、アンドロゲン受容体の感受性と関連していることが分かってきました。一般的に、この繰り返し回数が「短い」ほど、アンドロゲン受容体の感受性が「高く」なり、DHTの影響を受けやすくなる、つまりAGAを発症するリスクが高い傾向にあるとされています。遺伝子検査では、このCAGリピート数やGGCリピート数を測定し、統計的なデータに基づいて、「リスク高」「リスク中」「リスク低」といった形で、AGAのなりやすさを評価します。例えば、「CAGリピート数が基準値より短いため、AGAのリスクは平均より高いと考えられます」といった報告がなされます。クリニックや検査機関によっては、アンドロゲン受容体遺伝子だけでなく、DHTを生成する酵素である「5αリダクターゼ」の活性に関わる遺伝子のタイプや、その他、毛髪の成長に関連するとされるいくつかの遺伝子マーカーを併せて調べる場合もあります。複数の遺伝子情報を組み合わせることで、より総合的なリスク評価を目指しています。ただし、これらの検査でわかるのは、あくまで遺伝的な「傾向」や「確率」です。AGAの発症には、まだ解明されていない他の遺伝子や、生活習慣などの環境要因も複雑に関わっています。検査結果は、自分の体質を知るための一つの情報として捉えることが重要です。

次世代ケア?エクソソームとは何か

次世代ケア?エクソソームとは何か

近年、再生医療や美容医療の分野で注目を集めている「エクソソーム」。この新しい技術が、AGA(男性型脱毛症)を含む薄毛治療の分野でも応用され始めています。まだ耳慣れない方も多いかもしれませんが、エクソソームとは一体どのようなもので、髪の毛に対してどのような働きが期待されているのでしょうか。その基本的な概念から見ていきましょう。エクソソームは、私たちの体の中にある様々な細胞から分泌される、非常に小さなカプセル状の物質(細胞外小胞の一種)です。その大きさはナノメートル単位(1ミリメートルの百万分の1)と極めて小さく、細胞と細胞の間を行き来して情報を伝達するメッセンジャーのような役割を担っていると考えられています。具体的には、エクソソームの内部には、メッセンジャーRNA(mRNA)やマイクロRNA(miRNA)といった遺伝情報に関わる分子や、タンパク質、脂質などが含まれています。分泌された細胞(送り手)の種類によって、エクソソームに含まれる「メッセージ」の内容は異なり、受け取った細胞(受け手)の働きや性質に様々な影響を与えることが分かってきました。この細胞間の情報伝達機能に着目し、特定の細胞(例えば、幹細胞など)から抽出したエクソソームを、損傷した組織の修復や、老化の抑制、あるいは病気の治療に応用しようというのが、エクソソームを用いた治療法の基本的な考え方です。薄毛治療においては、特に「幹細胞」由来のエクソソームが注目されています。幹細胞は、組織の修復や再生に関わる様々な成長因子やサイトカインなどを分泌しますが、その働きの一部はエクソソームを介して行われていると考えられています。