睡眠不足が髪に悪い理由を語る上で、「自律神経」の存在を避けて通ることはできません。自律神経には、活動モードの「交感神経」と、リラックスモードの「副交感神経」があり、これらがシーソーのようにバランスを取り合って体の機能を調整しています。健康な髪が育つためには、副交感神経が優位になり、血管が拡張して、頭皮の隅々まで血液が巡る時間が必要不可欠です。しかし、睡眠不足の状態が続くと、脳は常に非常事態だと判断し、体を戦闘モードにする交感神経を活発化させ続けます。交感神経が優位な状態が24時間続くとどうなるでしょうか。まず、全身の血管が収縮して血圧が上がり、頭皮の毛細血管への血流が途絶えます。頭皮は体の中でも末端に位置するため、ただでさえ血流が悪くなりやすい場所ですが、睡眠不足による血管収縮はそれにトドメを刺すようなものです。さらに、交感神経の興奮は皮脂の過剰分泌を招きます。寝不足の翌朝、顔や頭皮がベタベタしている経験があると思いますが、これはストレスに対抗しようとして体が油分を出している証拠です。この過剰な皮脂が酸化して過酸化脂質となり、毛穴を詰まらせ、炎症を引き起こすことで、抜け毛のリスクは跳ね上がります。また、交感神経優位の状態では胃腸の働きも低下するため、せっかく食事で摂ったタンパク質やミネラルも十分に吸収されず、髪の材料不足に陥ります。つまり、睡眠不足による自律神経の乱れは、血行不良、皮脂過多、栄養不足という「薄毛の三重苦」を同時に引き起こすのです。髪を生やしたいなら、まずは脳と体を休ませ、副交感神経というリラックスのスイッチを入れてあげることが何よりの特効薬となります。