「睡眠不足はハゲる」という言葉を単なる都市伝説や脅し文句だと思って聞き流していると、取り返しのつかない事態を招くことになります。なぜなら、睡眠と髪の成長には、医学的にも非常に密接かつ重要な関係があるからです。髪の毛は、毛根にある「毛母細胞」が分裂することで伸びていきますが、この細胞分裂が最も活発に行われるのは、私たちが起きている昼間ではなく、寝ている夜間なのです。この細胞分裂を指令し、強力にサポートするのが、深い睡眠中に脳の下垂体から大量に分泌される「成長ホルモン」です。成長ホルモンは、骨や筋肉を作るだけでなく、毛母細胞に働きかけてタンパク質の合成を促し、ダメージを受けた頭皮の組織を修復する、いわば「天然の最強育毛剤」です。しかし、睡眠時間が短かったり、質が悪くて浅い眠りが続いたりすると、この成長ホルモンの分泌量が激減してしまいます。その結果、毛母細胞は活動エネルギーを失い、新しい髪を作ることができなくなるばかりか、昼間に受けた紫外線や乾燥によるダメージを修復することもできず、髪は細く弱々しくなり、最終的には抜け落ちてしまうのです。また、睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、交感神経を過剰に優位にさせます。交感神経が緊張すると血管が収縮するため、頭皮への血流が滞り、髪に必要な酸素や栄養素が運ばれなくなるという兵糧攻めのような状態に陥ります。つまり、睡眠不足を続けることは、自分自身の体内で育毛剤の供給をストップし、さらに栄養のルートまで遮断するという、髪にとって最悪の環境を自ら作り出していることに他ならないのです。高価なシャンプーや育毛剤を使う前に、まずはタダでできる最高のヘアケアである「睡眠」を見直すことが、フサフサの髪を守るための絶対条件なのです。