男性型脱毛症いわゆるAGAであるかどうかを判断するための医学的な基準は単に髪が薄いかどうかという主観的な印象だけでなく日本皮膚科学会が定めた診療ガイドラインやハミルトン・ノーウッド分類といった国際的な指標に基づいた厳格な診断プロセスによって決定されるものであり専門医はこれらの基準を用いて患者の頭皮や毛髪の状態を多角的に分析し確定診断を下しています。まず最も基本的な判断基準となるのが脱毛のパターンでありAGAには特徴的な進行形式が存在します。具体的には額の生え際から後退していく前頭部型と頭頂部のつむじ周辺から薄くなっていく頭頂部型そしてその両方が同時に進行する混合型がありこれら以外の側頭部や後頭部から薄くなるケースは通常AGAとは診断されず甲状腺機能低下症や膠原病あるいは円形脱毛症といった別の疾患が疑われることになります。次に医師が注視するのが毛髪の軟毛化という現象でありこれはAGAのメカニズムであるヘアサイクルの短縮によって成長期が十分に全うされず髪が太く硬く育つ前に抜け落ちてしまうために生じるものでありマイクロスコープなどの拡大鏡を用いて頭皮を観察した際に太い毛と細い毛が混在しており全体の髪の毛に対して軟毛の割合が二割を超えているかどうかが重要な判断基準となります。また一つの毛穴から通常であれば二本から三本の髪が生えているものが一本しか生えていない毛穴が増加している場合も毛根の活力が低下しているサインとしてAGAの診断を裏付ける要素となります。さらに問診においては家族歴すなわち遺伝的な背景も重要な判断材料となり母方の祖父や曽祖父に薄毛の人がいる場合はX染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子の変異を受け継いでいる可能性が高くAGA発症のリスクファクターとして考慮されます。加えて血液検査を行うことでテストステロンやジヒドロテストステロンの値を測定するだけでなく薄毛の原因となり得る亜鉛欠乏や貧血そして甲状腺ホルモンの異常などを除外診断することも正確な判断を下すためには不可欠なプロセスです。このように医師によるAGAの判断は視診による脱毛パターンの確認と拡大鏡による毛髪の質の評価そして詳細な問診と血液検査による客観的なデータの分析という複数のステップを経て行われるものでありネット上の簡易的なセルフチェックだけでは判別できない微細な兆候を見逃さずに捉えることで早期発見と早期治療につなげることが可能となるのです。したがって自分がAGAかもしれないと不安を感じた場合には自己判断で市販の育毛剤を使い始める前にまずは皮膚科専門医やAGA専門クリニックを受診し医学的根拠に基づいた正確な診断を受けることが悩みを解消するための最も確実で近道な方法であると言えるでしょう。
医師が明かすAGAの医学的判断基準と診断フロー