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後頭部の薄毛、その意外な原因とは
薄毛の悩みというと、多くの人が、額の生え際が後退するM字型や、頭頂部が薄くなるO字型の、いわゆる男性型脱毛症(AGA)を思い浮かべるでしょう。しかし、意外と多くの人が悩んでいるのが、自分では見えにくく、しかし他人からは目につきやすい「後頭部」の薄毛です。後頭部は、AGAの影響を最も受けにくい場所とされているため、「なぜ、ここが薄くなるのだろう?」と、その原因が分からず、不安に感じている方も少なくありません。後頭部の薄毛は、AGAとは異なる、様々な原因によって引き起こされる可能性があります。その原因を正しく理解することが、適切な対策への第一歩となります。まず、最も一般的な原因の一つが、「脂漏性脱毛症」です。これは、頭皮の皮脂が過剰に分泌され、その皮脂を餌とするマセラチア菌などの常在菌が異常繁殖し、頭皮に炎症(脂漏性皮膚炎)を引き起こすことで、抜け毛が増える症状です。後頭部から首筋にかけては、皮脂腺が多く、蒸れやすい場所であるため、この症状が現れやすいのです。次に、「牽引性脱毛症」も、特に女性に多く見られる原因です。ポニーテールや、きつく結ぶお団子ヘアなど、毎日同じ髪型で、髪を強く引っ張り続けることで、毛根に負担がかかり、後頭部や生え際の髪が抜けてしまうのです。また、意外な盲点となるのが、睡眠中の「枕との摩擦」です。寝返りを打つたびに、後頭部が枕と擦れ合うことで、髪のキューティクルが傷つき、切れ毛や抜け毛の原因となることがあります。さらに、これらの物理的な原因だけでなく、円形脱毛症が後頭部に発症したり、あるいは、甲状腺機能の低下といった、内科的な疾患が、髪全体のボリュームダウンの一環として、後頭部の薄毛を引き起こしている可能性も、ゼロではありません。
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私のAGA治療、半年間の全記録
鏡を見るたびに、後退していく生え際と、薄くなっていく頭頂部に、ため息をつく日々。30代後半に差し掛かった私は、明らかに進行する薄毛に、深刻なコンプレックスを抱いていました。様々な育毛シャンプーや、育毛剤を試しましたが、気休めにしかなりません。私は、意を決して、AGA専門クリニックの扉を叩きました。医師の診断は、やはり「男性型脱毛症」。しかし、「今から始めれば、まだ十分に改善できますよ」という、医師の力強い言葉に、私は希望を見出しました。治療方針は、フィナステリドの内服と、ミノキシジル外用薬の塗布という、最も標準的な組み合わせでした。治療を開始して、最初の1ヶ月。期待とは裏腹に、私の髪に起こったのは、「初期脱毛」という、悪夢のような現象でした。シャンプーをするたびに、ごっそりと抜けていく髪の毛。枕についた抜け毛の数に、毎朝、絶望しました。「話には聞いていたけれど、本当に抜けるんだ…」。治療をやめてしまいたいという衝動に、何度も駆られました。しかし、医師の「これは、効いている証拠です」という言葉を信じ、私は、ただひたすら、毎日、薬を飲み、塗り続けました。2ヶ月が過ぎた頃、抜け毛の量が、少しずつ、減ってきたことに気づきました。そして、3ヶ月目。洗面台の鏡で、自分の頭皮をまじまじと見ていると、生え際の、後退していた部分に、まるで黒い点々のような、短く、しかし力強い「産毛」が生えているのを、発見したのです。その瞬間、私の心に、確かな光が灯りました。4-ヶ月、5ヶ月と経つうちに、その産毛は、徐々に太く、長くなっていきました。そして、治療開始から、ちょうど半年が経った日。私は、美容室で、担当の美容師さんから、こう言われました。「あれ?最近、何かやりました?髪、すごくしっかりしてきましたね」。その一言が、私の半年間の、孤独で、不安な戦いが、決して無駄ではなかったことを、何よりも雄弁に証明してくれました。
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AGA治療の期間と費用のリアルな話
AGA治療は、長期にわたる継続が必要な治療です。そのため、その効果だけでなく、「費用」という現実的な問題と、どう向き合っていくかが、治療を成功させるための、非常に重要な要素となります。AGA治療は、健康保険が適用されない「自由診療」であるため、その費用は、全額自己負担となります。そして、その料金は、クリニックや、処方される薬の種類によって、大きく異なります。一般的なAGA治療にかかる、月々の費用の相場を見ていきましょう。最も標準的な治療である、フィナステリド(プロペシアなど)の内服薬のみの場合、その費用は、月に5,000円から10,000円程度です。より強力な効果が期待される、デュタステリド(ザガーロなど)の内服薬になると、月に8,000円から12,000円程度が相場となります。これに、ミノキシジルの外用薬(塗り薬)を併用する場合は、さらに月に7,000円から15,000円程度が、上乗せされます。つまり、内服薬と外用薬を組み合わせた、一般的な治療を行う場合、月々の負担は、安くても1万2千円、高い場合は3万円近くになることもあります。この費用が、治療を続ける限り、毎月、毎年、かかり続けていくのです。この経済的な負担を、少しでも軽減するための方法として、近年、注目されているのが「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」の活用です。先発医薬品(プロペシアやザガーロなど)の特許が切れた後に、他の製薬会社が、同じ有効成分で製造・販売する薬で、開発コストがかからない分、価格が大幅に安く設定されています。例えば、フィナ-ステリドのジェネリックであれば、月に3,000円から5,000円程度で処方してくれるクリニックもあり、治療費を半分近くに抑えることも可能です。また、海外から、個人輸入で安価な薬を取り寄せるという方法もありますが、これには、偽造薬のリスクや、副作用が出た場合に、国の救済制度が受けられないといった、深刻な危険が伴います。安全で、持続可能な治療を続けるためには、国内の信頼できるクリニックで、医師の診察のもと、正規品や、認可されたジェネリック医薬品を処方してもらうこと。そして、自分の経済状況に合った、無理のない治療プランを、医師と相談しながら立てていくことが、何よりも大切です。
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ノンシリコンシャンプーは薄毛に良い?
近年のヘアケア市場で、すっかり定番となった「ノンシリコンシャンプー」。多くの製品が、「髪と頭皮に優しい」というイメージを打ち出しており、薄毛に悩む人々にとっても、魅力的な選択肢の一つとして認識されています。しかし、果たして、ノンシリコンであることは、本当に薄毛対策に有効なのでしょうか。そのメリットと、誤解されがちな点を、正しく理解しておきましょう。まず、「シリコン(シリコーン)」とは、髪の表面をコーティングし、指通りを滑らかにしたり、ツヤを出したり、ドライヤーの熱から髪を守ったりする役割を持つ化学成分です。このシリコン自体が、直接的に髪や頭皮に悪影響を及ぼす、毒性のある物質というわけではありません。問題となるのは、その「すすぎ残し」です。シリコンが、頭皮や毛穴に残留すると、それが毛穴を塞いでしまい、健康な髪の成長を妨げたり、頭皮の炎症や、かゆみの原因となったりする可能性がある、と指摘されています。ノンシリコンシャンプーの最大のメリットは、この「毛穴詰まりのリスクを低減できる」という点にあります。シリコンが配合されていないため、すすぎ残しによる頭皮への負担が少なく、頭皮をより「素」の状態、すなわち清潔な状態に保ちやすいのです。これは、健康な髪が育つための土壌である、頭皮環境を整えるという、薄毛対策の基本に合致しています。しかし、ここで注意すべきは、「ノンシリコン=薄毛に効く」というわけでは、決してないということです。ノンシリコンシャンプーには、髪を生やす成分は入っていません。また、シリコンのコーティング効果がないため、髪がきしんだり、パサついたり感じられることもあります。本当に重要なのは、シリコンの有無よりも、シャンプーの根幹をなす「洗浄成分」が、自分の頭皮に合っているかどうか、ということです。たとえノンシリコンであっても、洗浄力の強すぎるシャンプーを使っていれば、頭皮は乾燥し、トラブルの原因となります。ノンシリコンは、あくまでも、シャンプー選びの一つの選択肢。「ノンシリコンだから良い」と盲信するのではなく、アミノ酸系の優しい洗浄成分であるか、余計な添加物が含まれていないか、といった、総合的な視点で、製品を選ぶことが大切です-。
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薄毛シャンプーの効果を実感するまでの期間
薄毛対策のために、新しいシャンプーを使い始めた。しかし、一週間、二週間と使い続けても、なかなか目に見える変化が現れず、「本当に効果があるのだろうか」と、不安や焦りを感じてしまう。そんな経験はありませんか。薄毛対策シャンプーの効果を実感するためには、ある程度の「期間」が必要であることを、まず理解しておくことが重要です。その期間を考える上で、鍵となるのが、髪の毛が生え変わる周期、すなわち「ヘアサイクル」です。私たちの髪の毛は、「成長期(髪が伸びる期間)」「退行期(成長が止まる期間)」「休止期(髪が抜け落ちる準備をする期間)」という、3つのステージを繰り返しています。薄毛対策シャンプーの役割は、このヘアサイクルが乱れてしまった頭皮環境を、正常な状態へと整えていくことです。しかし、頭皮環境が改善されたからといって、すぐに髪が太くなったり、増えたりするわけではありません。その効果が、目に見える形で、新しく生えてくる髪に反映されるまでには、少なくとも、このヘアサイクルが一巡する程度の時間が必要となるのです。一般的に、ヘアサイクルの「休止期」は、約3ヶ月程度とされています。つまり、シャンプーを使い始めて、頭皮環境が改善され、その健康な頭皮から、新しく、強く、太い髪の毛が「生え始める」までに、最低でも3ヶ月はかかる、と考えるべきなのです。そして、その新しい髪が、ある程度の長さにまで成長し、髪全体のボリューム感の変化として、自分自身で「効果があった」と実感できるようになるまでには、さらに数ヶ月、合計で「最低でも半年」は、継続して使用してみる必要があるでしょう。もちろん、フケやかゆみが治まったり、頭皮のベタつきが改善されたりといった、頭皮環境そのものの変化は、もっと早い段階で感じられるかもしれません。しかし、髪質の変化という、本当の意味での効果を求めるのであれば、焦りは禁物です。最低半年は、じっくりと、そして辛抱強く、自分の頭皮と向き合い続ける。その覚悟を持つことが、薄毛対策を成功へと導く、最も大切な心構えなのです。